サーバーを自社で持たずに利用できる「クラウドSaaS型EDI(軽量EDI/Web型)」。運用負荷を抑えられる選択肢として注目されていますが、安易な導入では取引先対応で行き詰まることも。本記事では、クラウドSaaS型EDIの運用モデルを解説します。
クラウドSaaS型EDIとは、ベンダーが管理するクラウド環境を通じて、EDI機能を利用するサービスです。自社でサーバーを構築・管理する必要がなく、月額料金などを支払って利用するサブスクリプション型のサービスが中心です。
利用できる機能や接続方式はサービスによって異なり、Web画面で取引データを確認・入力する方法のほか、CSVなどのファイル連携やAPI連携に対応したサービスもあります。自社でインフラを管理する必要がないため、初期投資や保守負担を抑えやすい点が特徴です。
クラウド型EDIと関連して挙げられることが多いのが「Web-EDI」です。クラウド型EDIがシステムの提供・運用形態を表すのに対し、Web-EDIはWebブラウザなどを利用した取引方式を表します。
Web-EDIは、専用のEDI環境を持たない取引先も参加しやすい一方、取引先ごとに異なる画面を使い分ける「多画面問題」や、画面入力・ファイル操作などの手作業が残ることもあります。
Web-EDIの導入を検討している場合は、クラウドで提供されているかだけでなく、基幹システムとの連携や取引先側の運用負担まで確認することが重要です。
ハードウェアの保守やOS・ミドルウェアのアップデート、障害発生時の一次対応は、クラウドSaaS型では原則としてベンダー側が担います。
そのため、情シスがインフラ維持に割いていた時間や手間を削減でき、EDI以外の業務に注力できるのがメリットです。
インボイス制度や電子帳簿保存法など、EDIに影響する法改正があった場合でも、クラウドSaaS型ではベンダーがまとめて対応。
ユーザー側での仕様確認や改修が不要で、追加コストや調査工数を抑えながら、法令に対応した環境を利用できます。
インターネット接続があれば利用できるため、本社・支店・在宅勤務など、複数拠点から同時にアクセスが可能です。専用回線や閉域網に縛られないため、テレワーク対応や拠点追加にも柔軟に対応できます。
組織変更や働き方の変化にも適応しやすい点は、近年特に重視されるポイントです。
多くのSaaS型EDIは機能やデータ形式が固定されたパッケージです。「画面入力」や「CSV形式」を取引先に合わせてもらう必要があるため、取引先数が多いほど導入時の調整負荷が膨らみます。
クラウドSaaS型EDIでも、取引先からJCA手順や指定伝票レイアウトを求められることがあります。低コストのSaaS型では対応できない場合も多く、結果として手作業や個別対応が残ってしまうケースがあるでしょう。
クラウドSaaS型EDIで失敗しないためには、製品比較の前に「どこまで業務を合わせられるか」という自社のスタンスを明確にしておきましょう。
業務を標準化してでもコストを抑えたい場合は、画一的なプラットフォーム型が向いています。一方、取引先や既存業務への影響を抑えたい場合は、クラウドでありながら調整余地のあるセミオーダー型が現実的です。
価格だけで選ばず、要件との適合度を重視すべきです。
当メディアでは、EDIサービス各社の特徴や導入事例を詳しく調査。「セミオーダー型」も含めた、導入目的別のおすすめEDIサービスを紹介しています。EDI選定の参考としてご活用ください。
以下の項目にすべて当てはまる場合、導入コストを抑えやすいクラウドSaaS型EDIが適しています。1つでも当てはまらない場合は、SaaS単体での運用は負荷が残ってしまうかもしれません。
社内に十分な運用リソースがなく、取引先ごとの個別対応を避けられない状況では、SaaS+BPO型EDIも検討価値があります。クラウドの利便性を活かしつつ、運用や調整業務を外部に任せることで、省力化と柔軟性を両立できるでしょう。
EDIサービスは取引先と使うシステムのため、費用や機能だけでなく「取引先の状況」に合わせた選定が不可欠です。
取引先ごとに仕様や通信手順が異なり個別対応が必要な企業は【個別カスタマイズ型】、金融連携や厳格なセキュリティ要件・閉域網での運用が必要な企業は【専用ネットワーク対応型】、自社仕様のWeb画面を取引先にも使ってもらうことが可能な場合は【自社主導・簡易Web型】がおすすめです。
【生活用品商社】百貨店・量販店ごとの複雑な個別ルールをすべて吸収し、ファイル交換型と3つのWeb-EDIを統合。高難易度の移行をトラブルなく完遂。
【エネルギー・プラント関連】高セキュリティな専用ネットワーク(閉域網)を活用し、受発注と金融決済の通信を統合。堅牢な通信基盤により安全で安定した取引運用を実現。
【食品メーカー・卸】電話・FAX依存の注文をWeb-EDIへ集約し、複数の飲食店からの受注を一元管理。手作業による入力負荷をなくし、正確で効率的な業務へ刷新。